During Riot
in Nairobi, Kenya

18ヵ月(1年半)かけて
一人で旅をしていたとき、
その始まりは アフリカでした。



当時イギリスでの仕事を終えた私は
無期限で旅することを決め、
ロンドンから飛行機でアラブを経由して
ケニアの首都ナイロビに到着。

空港から ナイロビ市内へは
スリに気をつけながら
地元のバスに乗ってみることに。

当たり前だけど、ケニアの人々の肌は黒い。
そんな中で 黄色い肌の私は
普通にしていても目立ってしまい
あちこちから視線を感じる。

バスがナイロビ市内に着いて、
運転手から ここが街の中心だと告げられ
ポツンと一人 降り立ったところは

昼間の繁華街とはいえ、
特に何をするでもなく
たむろしている人が多い。


初めてのアフリカで 
右も左も分からないけれど
雰囲気からして
治安が悪いことは 一目瞭然。

「これは大変なところへ来てしまった。
 どうしよう・・・」 と心の中で後悔し
泣きたくなった 次の瞬間、

「後悔するそのスキが ここでは危ない。
泣く暇があったら動こう」と我に返る。

そのままバックパックを担いで
歩いて安宿を見て回り、
3軒目のホテルに決定。

これで ひとまず落ち着ける。

トイレ・シャワー共同の
ごく簡素な部屋で 一泊 約300円。

部屋の鍵は一応あるけれど
簡単に こじ開けられそうなので、
自分で用意した 南京錠を使う。

写真:部屋の窓から街を見る私 in Nairobi, Kenya


部屋の中も 共同のトイレも、
先進国のスタンダードからすると
まったく清潔とは言えないけれど、
これも安宿の一面。

幸い、ホテルのスタッフは親切で
信頼のおける感じがして、
初めての国で 安宿を選ぶときの
一番大切なポイントはクリア。

ところで、
空港からホテルへ来るまでに
目にした街の様子がすごかった。

店々のショウウィンドウには
鉄格子がはめられていて、
しかもガラスが割られていたりする。


街全体が騒然とした雰囲気で
人々が殺気立っている感じ。

ホテルのスタッフに 
ナイロビはいつもこんな感じ
なのかと尋ねてみると

実は、前日に
暴動が起きたのだという。

えええ?
つい昨日、暴動があったって・・・

自分のナイロビ到着日が
暴動と重ならなくて良かったけど、
それにしても 治安と情勢が 悪すぎる。

日本でも 欧米でも、
アフリカの時事ニュースが
流されることは ほとんどないので

現地に来てみて初めて
アフリカの現状が見えてくる。

また逆に、
アフリカ現地で流されるニュースは
国際情報もアフリカ諸国がメインで
欧米や日本のニュースは本当に少ない。

世界中どこの国でも 
「国際情報」と銘打ちつつ
実際のところは 近隣諸国か
関係の深い国の ごく一部の
情報を流しているだけなので、

いざ現地に来てみると
それまで抱いていたイメージが
大きく崩され、ハッとする。

そうこうしているうちに、
ナイロビでまた暴動が起きると
知らされる。

えええ?

また暴動が起きるって・・・
そんなに頻繁にあるものなの?

一体、どれだけ危ないところへ
私は飛び込んでしまったのだろう。

とはいえ
ホテルのスタッフは慣れた様子で
冷静にアドバイスをくれる。

今度の暴動では
3日間の外出禁止令が出され、
安全確保のため3日間は
ホテルの玄関を完全に閉め切る。

その間、外出は
まったくできないけれど

食事については宿泊客用に
1階の大衆食堂で 充分な量を
確保しているから心配無用。

あとは各自で飲料水やジュース、
嗜好品のタバコ、お菓子などを
用意しておくと良いとのこと。

というわけで
外出禁止令の出る前日までに
買物を済ませて備える。

アフリカに着いて早々、まさか
暴動が起きて足止めを喰らうことに
なるとは、まったくの予想外。

当初の予定では
アフリカ滞在は3週間くらいを
考えていたけれど、

結果的に ケニヤ、タンザニア、
ザンビア、ジンバブエ 3000㎞を
陸路で旅した期間は5ヵ月。

ローカルのバスや乗合いタクシー
を使って旅しようと思ったら、
3週間では とても歯が立たない
ことを含めて

アフリカでの時間の流れ方は
先進国とはまったく違うことを
徐々に体でおぼえていくことになる。

さて、外出禁止令が出された
暴動の3日間は
もちろん一歩も外に出ず、

4階にあった自分の部屋の窓から
通りを見下ろしてみると

群衆と警察隊が
大変な様相になっている。

この暴動は本当に収まるのか?
今の状況が続くとしたら
このままナイロビから脱出できなく
なるのでは?・・・と心配になって、
じっとり冷や汗が出る。

一方、ホテルのスタッフは
「こんな時もあるよ。長くは続かないから大丈夫」
と楽天的で いつもと変わらない明るさに
とても救われる。

外出できない3日間の過ごし方は、
しばらく部屋にいると飽きるので

仲良くなった旅仲間と
お互いの部屋を行き来して話し込んだり、

ホテル内の
中央が吹き抜けになっている
眺めのいい廊下にイスを出して
本を読んだり

宿のスタッフと雑談したり
各階の様子をのんびり眺めて
人間模様を観察したり・・・。

面白いのは、この安宿には
私のような旅人のほかに、
長年住んでいる人達がいること。

もと船乗りだった日本人男性
インテリのイギリス老紳士
人懐っこいケニア人画家
子連れのアフリカ人娼婦など

ちょっとクセのある面々がいて
それぞれの人生模様が
本当に興味深い。

そんなわけで
外では激しく暴動が起きている最中でも
安宿内では いつもと変わらない
それぞれの個性的な日常生活が
営まれていて

何というか、この 
「まったりした 何でもあり感」
が心地よくて 面白い。

こうして 
ちょっと長居することになった
ナイロビの空気感や情景は
時間が経った今でも
鮮やかに よみがえってきます。


また、旅の始めに いきなり
超ド級のハプニングに見舞われたことで

このあと控えているであろう
「アフリカの荒波」に揉まれる
覚悟ができました。



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